エイミー 1
「今日はどこにつれていってくれるの?」
エイミーはシチューをすくいながら言った。
「町の市場に行くんだよ。誰かさんのせいでチーズがなくなってしまったからね。」
エイミーは嬉しそうに、わかったと返事をした。どうやら、昨夜のできごと、チーズを買いに行かなければならない理由は忘れてしまったらしい。
「いいかいエイミー、もうチーズをお風呂に持ち込んではだめだよ」
「どうして?」
「どうしても!」
—
マルシェが好きだ。
この喧騒は、みんな生きようとしているそんな音だ。
ここでは生きるためのものはなんだって手に入る。
新鮮なお肉や野菜、今朝焼いたパンや外国の絨毯だって!
もし一日がもっと長ければ、きっと時間を忘れて歩き続きてしまうだろう。
とはいえ、人いきれに包まれたマルシェで大勢の人ごみをかきわけながらエイミーの手を引くのは骨が折れる。
「シャル、ねえシャルってば」
力の抜けた手を引かれながら、エイミーがぼくの名前を呼ぶ。
「ごめんごめん、夢中だった」
足を止めると、エイミーは眉を下げて、やれやれという様子で言った。
「だめだよシャル、ちゃんと後ろも見ないと」