エイミー 3

家の前の坂を下り、まばらに植えられた針葉樹がある道を100ヤードほど行くと、湖に流れ込む細い小川がある。

小川には一本の細い橋がかかっていて、街に出かけるときには必ずその橋を通った。

橋といってもそれは粗末なもので、川を渡す二本の丸太の間に木の板が雑に打ち付けてあるだけ、というものだった。

渡ろうとすると板がゴトゴトと鳴るものだから、エイミーはこの橋をトロルの橋と呼んだ。

もっとも、このかわいい小川にトロルはいないし、ここらにはヤギだっていないのだが、前に話した昔話が気に入ったらしい。

トロルの橋はしばしば川の氾濫によって流された。そして、そのたびに近くに住むスーおじさんによって、新しくて頼りない”トロルの橋”がかけられた。

「また新しくなってる!」
市場に向かう途中、エイミーが目を輝かせながらトロルの橋を指さした。
おそらく先週の大雨によって、小川が氾濫し、やっぱり橋は流され、やっぱり新しく架替えられたのだろう。

前の架替えから半年ほどだろうか。僕には以前の橋との違いはわからない。

 

エイミーが鼻歌交じりに飛び乗ると橋はやっぱりゴトゴト鳴った。

「トロルさん橋を通してね」
ご機嫌な替え歌が木漏れ日に響く。

何度架替えられても、この橋はやっぱりトロルの橋なのだ。