友達がいた

窓の向こうに友達がいた。

なにもない部屋に設えられた木枠の窓。

ぴったりと枠にはめられた厚いガラスは音の一つも通さなかったが、美しく透き通っていた。

僕たちの持てる、隔たりを超えるコミュニケーション手段は身振り手振りだけだった。

それでもぼくたちは"会話"をしていた。

学校の話とか、ゲームの話とか、犬の話だとか、そんなくだらない話を毎日した。

 

ある日、ぼくは友達と喧嘩をした。

些細なことがきっかけだったが、それがなんだったかは忘れてしまった。

ぼくは感情に任せてガラスを割った。何度も何度も叩いて割った。

窓ガラスには数え切れないほどのヒビが入り、窓の視界を奪った。

 

窓の向こうに友達がいた。

身振り手振りは見えなくなっていた。